Sound Philosophy

同じ -16 LUFSなのに、なぜ違って聴こえるのか。|2曲の波形から見えた「音の居場所」

音の波形とラウドネスの流れを抽象的に表現したビジュアル。異なる音の動きと聴感上の印象の違いをイメージした、Vocalis DynamicsのSound Philosophy記事用イラスト。
koshi

Dynamics over Loudness

Vocalis Dynamicsでは、Integrated Loudness -16 LUFS前後、Avg. Dynamics / PLR 15 LU前後 を一つのベンチマークとしています。

数値だけを見ると、音量は揃っているように見えます。

しかし制作を進める中で、不思議なことに気付きました。

最近公開した2作品は、どちらも同じ -16 LUFS を目標に制作しています。

  • 永遠にともに / コブクロ
  • 時代 / 中島みゆき

ところが、Youlean Loudness Meter上で比較すると、音の動き方が大きく異なっていました。


The Metric of Life

数値は同じなのに、グラフはまったく違う

まずは「永遠にともに」。

Youlean Loudness Meter 2による「永遠にともに」のラウドネス計測結果。Integrated -16.0 LUFS、PLR 15.0 LUを記録したヒストグラム画面。

永遠にともに:Aメロでは深く沈み、サビで持ち上がる構成

この曲は、Aメロでは -21 LUFS近辺 まで下がり、サビでは -13 LUFS近辺 まで上昇しています。

静かな部分と盛り上がる部分の差が比較的大きく、グラフ上でも起伏がはっきり見えます。

Loudness Range:10.2 LU
Avg. Dynamics (PLR):15.0 LU

まるで「深く呼吸する曲」のような印象です。


続いて「時代」。

重音テト「時代」カバーのラウドネス推移。Integrated -16.0 LUFS、Avg. Dynamics (PLR) 14.8 LU、LRA 9.2 LUを示すYoulean Loudness Meter測定画面。ピアノが継続して鳴る構成により、小さい部分が約-23 LUFS付近で安定している。

時代:全体が比較的一定の位置を推移している構成

こちらは -16〜-20 LUFS付近 を行き来しています。

アップダウン自体は存在しますが、「永遠にともに」ほど大きくはありません。

Loudness Range:9.2 LU
Avg. Dynamics (PLR):14.8 LU

こちらは、一定の温度感を保ちながら静かに流れ続ける印象でした。


The Human Ear

違いは、歌っているキャラクターだけではなさそうだった

最初は単純に考えていました。

「弦巻マキ+宮舞モカのデュエット」と、「重音テトのソロ」。

歌唱キャラクターや声質の違いが、そのまま印象差になっているのではないか、と。

もちろん、その要素は存在していると思います。

しかし実際には、「永遠にともに」を聴いた後に「時代」を再生しても、音量を調整したくなる感覚はほとんどありませんでした。

少なくとも現時点では、聴感上の統一感は保たれているように感じています。

つまり今回の違いは、単純な声質差だけでは説明しきれない可能性があります。


The Place of Melody

平均値ではなく、「どこに音が存在しているか」

今回比較していて、もう一つ気になった点があります。

それは、楽曲の中で最も静かな部分の位置です。

グラフを見る限りでは、「永遠にともに」「時代」ともに、小さい部分はおおよそ -23 LUFS前後 に存在しているように見えました。

ただし、「永遠にともに」の冒頭だけは、一瞬 -25 LUFS近辺 まで下がっています。

最初は、

「少し小さいかもしれない」

とも感じました。

しかし実際に再生すると、歌が始まった後は違和感はほとんどありませんでした。

もしこの静かな状態が長い前奏として続いていた場合、聴き手は音量を上げたくなるのだろうか。

逆に、その後のサビを大きく感じるのだろうか。

まだ2作品しかないため結論は出せませんが、「最も静かな場所」が想像以上に聴感へ影響している可能性があります。


Production Notes

もちろん、音の感じ方には個人差があります。

私自身の感覚では、「永遠にともに」の後に「時代」を再生しても、音量を調整したくなる感覚はありませんでした。

また動画後の広告についても、

「少し広告が大きいかな?」

程度で、不快なほどの差は感じていません。

さらに他の音楽系チャンネルと比較すると、一般的には -14 LUFS前後 を基準としている印象があり、続けて再生すると少し大きく感じることがあります。

ただ、それでも音量を操作するほどの差ではない、と現時点では感じています。

むしろ印象として残るのは、大きさではなく、長時間聴いた時の疲れにくさや、静かな没入感でした。


音量は、平均値だけで決まるものではない。

音が、どこで呼吸しているのか。

その配置自体が、音楽のキャラクターを作っているのかもしれません。

まだ2作品。

けれど、その2作品だけでも見えてきたものがありました。

その答えは、もう少し作品が増えてから見えてくる気がしています。

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